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よくあるご質問

医療関連

当事務所にお寄せいただく、医療関連のよくあるご質問についてまとめています。
質問をクリックすると、回答が表示されます。

Q1. 医療法人の名称
医療法人の設立を考えています。どのような名称が適当でしょうか。医療法人○○クリニックは可能ですか?

  • 医療法人以外の者は、医療法人という名称を使えません。
  • 医療法人○○クリニックは可能です。
  • 誇大な名称、国、都道府県、市町村名は避けましょう。
  1. 医療法人の名称
    「医療法人」という名称は、医療法人のみでしか使えません。他の営利法人が医療法人の名称を使った場合には、10万円以下の過料に処せられます。 医療法人○○クリニックという名称はよく見かけるのですが、同じような名称の医療法人を設立することはできません。例えば、医療法人第2○○クリニックなどでは、 都道府県知事の設立認可はおりないでしょう。
  2. 好ましくない名称
    医療法人の名称として好ましくないものは、セントラル××、△△センター病院、第一○○クリニック、優良☆☆法人などです。 これらのように、必要以上に医療法人を大きく見せるような名称は、好ましくないものとして例示されています。
  3. 営利法人との関係
    医療法人の名称に取引会社等、医療法人と関係がある会社の名称を用いることはできません。最近では、営利法人が実質的に医療法人の経営を掌握しているようなケースもありますが、 営利法人を連想させるような名称を使うことは、非営利を原則とする医療法人では禁止されています。

Q2. 医療法人の設立時の資産
医療法人の設立時に必要な資産は何ですか。賃借している診療所でも法人設立は可能ですか?

  • 年間支出予算の2ヶ月分に相当する額の運転資金が必要です。
  • 診療所等の診療施設は、賃貸物件でも可能です。
  1. 医療法人に必要な資産
    新たに診療所を開設するために医療法人を設立する場合には、運営の安定性を確保するため、2ヶ月分以上の運転資金を有していることが望ましいでしょう。 さらに、診療所経営の持続性の観点からも医業未収金等は、出資または寄付することが望ましいものです。しかし、相当期間経営実績がある診療所が医療法人を設立する場合には、 その必要性はないとされています。
  2. 土地、建物を賃借する場合
    医療法人が必要とする医療施設(土地、建物)を賃借することは認められています。賃借する場合には、以下の点に注意してください。
    ・土地、建物については、賃貸借登記をすることが望ましい。
    ・賃貸借契約は適正になされ、賃借料の額、契約期間等の契約内容が適正であること。
    ・借料が医療機関の収入の一定割合とするものでないこと。
  3. 現物出資する資産
    医療法人は、業務を行うのに必要な資産を有してなければなりません。業務に必要な資産には、土地、建物のほか医薬品、医療用機器も含まれます。 また、業務に必要な資産を取引するために有している負債は、法人に引き継ぐことが可能です。

Q3. 医療法人の業務範囲
医療法人の行うことができる業務に制限はありますか。病院、診療所以外の施設の運営も可能でしょうか?

  • 医療法人が開設できる施設は、原則として、病院、診療所または介護法人保健施設のみです。
  • しかし、業務に支障のない限り、定款または、寄付行為の変更により他の医療に関係する業務も運営することができます。
  1. 医療法人の業務範囲
    医療法人の業務の目的は、原則として、病院、診療所または介護老人保健施設の運営です(医療法第39条第1項)。 しかし、医業に付随する業務のうち一定のもの(附帯業務)については、医療法人の主たる業務に支障のない範囲で運営が許可されています。 医療法人が附帯業務を行うためには、定款または寄付行為の変更が必要となります。定款または寄付行為の変更には都道県知事の認可を要し、 その認可申請の際、都道府県に対し、2年間の分の新規事業計画書を提出することとなります。

    ■実施可能な主な附帯業務(医療法42条1)
    内容 具体例
    医療関係者の養成または再教育 看護専門学校、リハビリテーション専門学校
    医学または歯学に関する研究所 腫瘍医学研究所、臨床医学研究所
    疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設 メディカル・フィットネス(構成労働省令の施設要件を満たすもの)
    疾病予防のために温泉を利用させる施設 クアハウス(構成労働省令の施設要件を満たすもの)
    その他保健衛生に関する業務 下記2.参照
  2. その他保健衛生に関する業務とは
    保健衛生に関する業務(医療法第42条第1項第6号)については、厚生労働省により通知が出されており、主に以下の業務が運営可能となっています。
    業務の種類 内容
    衛星事業 薬局、施設所、衛生検査所
    介護事業 訪問介護ステーション、介護福祉養成施設、ケアハウス、ホームヘルパ養成研修事業
    社会福祉関係 難病患者等居宅生活支援事業、乳幼児健康支援一時お預かり事業
    高齢者支援 高齢者等の介護予防・生きがい活動支援事業、在宅介護支援事業
    患者の送り迎え 患者等の有償移送行為

Q4. 有料老人ホームの施設
医療法人が施設する有料老人ホームについて、具体的に教えてください。

  • 医療法改正により、老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームの設置が可能となりました。
  • 有料老人ホームの設置には、事業開始2年間の事業計画書及び予算書が必要となります。
  1. 有料老人ホームの設置
    今回の医療法改正により、医療法人による有料老人ホームの設置が認められました。 旧医療法では、医療法人の非営利性を堅持するという立場から、有料老人ホームの設置は認められていませんでした。 厚生労働省は、平成23年度末までに療養病床を23万床削減するという計画を発表しました。病床削減によって医療法人の利益が削減することは明白です。 その収益を補うことができるように、医療法人の業務範囲を拡大したのです。
  2. 定款または寄附行為の変更
    医療法人が有料老人ホームを設置するためには、医療法人の定款または寄附行為の変更が必要です。定款または寄附行為の変更は、都道府県知事の認可がなければ効力を有しません。 したがって、都道府県に対して、定款または寄附行為の変更の認可申請を行なうことになります。

    ■定款変更の手続き
    医療法人の内部手続き 社員総会による定款変更決議
    認可申請窓口 各都道府県
    認可申請時に必要な書類
    1. 定款変更認可申請書
    2. 定款の新旧条文対照表
    3. 新定款(案)
    4. 定款変更を決議した社員総会の写し(要原本証明)
    5. 開設する有料老人ホームの従業員定員、敷地及び建物の構造設備の概要を記載した書類及び図面2
    6. 定款変更後2年間の事業計画及びこれに伴う予算書
    7. 医療法人の運営状況を明らかにした書類
    8. 不動産を賃貸する場合には、賃貸借契約書及び不動産登記簿謄本

    ※定款変更認可申請の標準処理期間は、6週間です。各都道府県によって手続きが異なることがありますので、申請前に相談することが望ましいでしょう。

Q5. 質問をもらって
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  • 医療法人の理事長は、原則として、医師または歯科医師から選任します。
  • 都道府県知事の認可を受けた場合は、医師または歯科医師でない者でも理事長に就任することができます。
  1. 理事長の要件
    医療法人の理事長は、原則として、医師または歯科医師の理事のうちから選任しなければなりません。 確かに、理事長を医師または歯科医師に限定するよりも経営能力に優れた人材を選んだほうが医療法人の利益に貢献するかもしれません。 しかし、医師または歯科医師でない者が実質的に医療法人の経営を支配した場合、医学的知識の欠落に起因した問題が生じる可能性があります。 そのような事態を未然に防止するため、このような規定が設けられたのです。
  2. 医師または歯科医師でない者を理事長とする場合
    医業経営の近代化・効率化を図る観点から、候補者の履歴、理事会構成等を総合的に勘案し、適正かつ安定的な法人経営を損なう恐れがないと認められる医療法人については、 医師または歯科医師以外の者から理事長を選任することが可能となっています。その場合にも、都道府県知事の認可を必要とします。認可の条件は以下の通りです。
  • 理事長が死亡し、または重度の障害により理事長の職務を継続することが不可能となった際に、その子女が医師又は歯科大学在学中か、 または、卒業後、臨床研修その他の研修を終えるまでの間、医師または歯科医師でない配偶者等が理事長に就任しようとする場合
  • 次に渇げるいずれにか該当する医療法人
    1. 特定医療法人または特別医療法人
    2. 地域医療支援病院を経営している医療法人
    3. 財団法人日本医療評価機構が行なう病院機能評価による認定を受けた医療機関を経営している医療法人
  • 候補者の経歴、理事会構成等を総合的に勘案し、適正かつ安定的な法人運営を損なうおそれがないと都道府県知事が認めた医療法人

Q6. 監事の職務
監事の主な職務について教えてください。

  • 医療法人の監事は、業務の監査、財産状況の監査を行い、監査報告書を提出します。
  1. 監事の業務
    監事とは、医療法人の財産及び理事の業務執行を監査する機関です。 監事は、理事の業務執行の状況、当該法人の財産の状況、特に当該法人の事業報告書、財産目録、賃貸対照表及び損益計算書について十分な監査を行わなければなりません。 そして、監査を行った場合には、監査報告書を作成し、社員総会及び理事会にて報告を行います。その監査報告書は、法人において保存が必要となります。
  2. 兼職制限
    また、監事は理事または医療法人の職員を兼務することができません。監事が医療法人の監査機関の性質を有する以上、 医療法人の執行機関である理事やその補助者としての職員との兼職を禁止し、監査の客観性や適正さを確保しているのです。
    【医療法第48条】
    監事は、理事又は医療法人の職員(当該医療法人の開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の管理者その他の職員含む)を兼ねてはならない。
  3. 外部監査
    病院または介護老人保健施設を開設する医療法人の監査については、外部監査を行うことが望ましいでしょう。特に負債が多額(100億円以上)の医療法人については、 公認会計士または監査法人による監査あるいは指導を受け、医療法人の運営の安全、確実なものにしなければなりません。
    →監事の適任者は?
    では、医療法人の監事に適任な者とは、どのような人を指すでしょうか。 厚生労働省が公開している「医療法人運営管理指導要綱」では、実際に法人監査業務を実施できない者が名目的に選任されていることは適当ではなく、 財務諸表を監査しうる物を選任することと記載しています。しかし、実際には、役員の親族関係者や医療法人を退職した元従業員などが就任する例が多いようです。 監事となるべき者は、医療業に精通し、財務的知識があり、医療法人から経済的に独立した者が適任といえます。

Q7. 医療法人の業績がよく、多額の利益が発生しました。出資者に配当することは可能でしょうか?

  • 医療法人は、利益配当を行うことができません。
  • 配当に類似する行為(出資者に対する多額な賃借料等)も禁止されています。
  1. 剰余金の配当禁止
    医療法人は、利益配当を行うことが禁止されています。医療法人が営利を目的として存在するものではないからです。もちろん、事業継続のために利益を計上することは必要です。 しかし、その獲得した利益を出資者に配当するころが可能であれば、不必要な医療サービスによって多額の利益を計上し、多くの配当を出資者に分配しようとする危険性も否定できません。 医療法人に利益が生じた場合には、施設の設備、改善等に充てるほか、すべて積立金として留保すべきこととなります。また、会計上の配当ではなくとも、 事実上利益の分配とみなされる行為も禁止されています。
  2. 配当とみなされる行為とは?
    以下のような行為は、配当とみなされる行為として禁止されています。
  • 役員の地位のみに基づいて高額な報酬を支払うこと
  • 医療法人と取引のある関連法人に対して、通常の取引価格よりも高額の対価を支払うこと
  • 医療法人が賃借している不動産の所有者と医療法人の社員が同じである場合において、近隣相場よりも高額の賃料を支払っていること
  • 医院の収入に応じて、定率の賃料を支払っていること
  • 関連会社より資金の借入れを行い、利益に応じて金利を支払っていること

Q8. 医療法人設立のメリット(税金面)
個人診療所を運営していますが、医療法人の設立を検討しています。法人設立にあたっての税務面のメリットを教えてください。

  • 税率を比較した場合、個人よりも医療法人の方が得です。
  • 医療法人では、生命保険の加入、退職金の支払いが可能となります。
  • 個人事業では認められない経費が、医療法人には認められます。
  1. 実効税率の比較
    医療法人と個人診療所の所得を同額として単純に比較した場合、医療法人の税額の方が低いことは明らかです。理事長には、医療法人から役員報酬が支給されるので、 報酬には所得税が課されます。その税金も加味して比較しなければなりませんが、それでも医療法人に組織変更してほうが所得(利益)に対する税金は安いでしょう。
  2. 経費となる支出
    個人診療所では必要経費あとならなかった支出も、医療法人から支出される場合には損金となるものがあります。
    項目 個人診療所 医療法人
    役員退職金の支給 × 勤務期間・功績に応じて支給可能
    生命保険 生命保険料控除(10万円を限度)のみ 定期保険は、原則、損金算入可
    役員保険 × 法人所有の社宅を一定額の負担により賃借可能
    役員賞与 × 使用人兼務役員には、賞与の支給可
    役員報酬 同一生計親族に対する給与は、届出が必要 親族であっても、役員としての報酬を支給可能
    社報費用 × 妥当な葬儀費用を法人で負担可能
  3. 青色欠損金の繰越控除
    医療法人に損失が生じた場合、その欠損金を最大7年間繰り越しできます。個人診療所の繰越期間は3年間でした。 含み損のある資産を売却した場合や役員退職金を支給した場合にその損失を長期間、繰り越すことができます。

Q9. 理事長報酬の決め方
医療法人を設立後、役員報酬を理事長に支払いますが、どのように決定すればよいですか?

  • 理事長報酬を除いた医療法人の利益を予測します。
  • その利益の額を限度として、役員(理事長・理事)に対する報酬を決定します。
  1. 理事長報酬
    役員報酬をいくらにするかは、法人全体の利益(役員報酬を除く)がどの程度になるかを想定して行います。個人の生活のために最低限必要な金額は別として、 不必要に役員報酬を多額に設定することは望ましくありません。なぜなら、役員報酬を多額に設定することによって、結果的に税金が高くなる場合もあるからです。
  2. 借入金の返済のための利益
    医療法人の経営を行っていて、獲得した利益がそのまま現金として残るわけではありません。利益は現金等を増加させますが、医療法人に借入金等がある場合には、 その借入金は、税金を引いた後の「利益」から返済されています。すなわち、税引き後利益から借入金を返済した金額を引いた残りが、医療法人の現金の増加額となります。 役員報酬は、借入金の返済額も考慮して決定しなければなりません。

    税引き後利益:2,500万円 …1
    減価償却費:300万円 …2
    年間借入金返済額:1,200万円 …3
    当期現金増加額:1+2+3=1,600万円
  3. 同族役員への給与
    理事長に対して役員報酬を支払うほか、役員に就任している同族親族に対しての報酬を支給することも可能です。 同族役員への報酬支給は、その支給金額の妥当性を証明するのが難しいのですが、その者の勤務の状況、能力、貢献度に応じ、合理的根拠を定めて支給すれば問題ないでしょう。